フィードバックで変わる人材育成

日常的に上司から部下へ業務の指示を行い、その成果に対してフィードバックを行っているでしょうか。人材育成では、フィードバックはティーチングのスキルのひとつとして捉えられています。ただ、「このフィードバックで合っているのだろうか?」、「本人に気づきを与えることができただろうか?」と疑問に感じている方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、人材育成におけるフィードバックとはどういう効果があるのか、フィードバックを行うときのポイントについて解説します。
以前解説した「気にかけ力が人材育成に必要なワケ」と併せてお読みくださると幸いです。

人材育成におけるフィードバックの効果

人材育成において、フィードバックとは「相手の行動に対して改善点や評価を伝え、軌道修正を促すこと」を意味します。もともとは、「フィードバック制御」((フィードバック制御とは、出力の目標値と実際の出力値を比べて、2つが一致するように改善する制御方法)という制御工学の分野から生まれた言葉だと言われています。

英語では、「食べ物を与える」という意味の「feed」と、「返す」という意味の「back」を合わせて「feedback」(直訳は帰還)と表記します。これを略した「FB」も、よく使われています。

フィードバックで得られる効果としては、以下の4点です。

①目標に向けて軌道修正できる
フィードバックの目的は、行動のずれを修正すること。部下が間違った方向に努力していたら、それを適宜指摘し、行動を改善させることが大切であり、上司がメンバーの目標に向けて正しく取り組めるように行動を軌道修正することで、チーム全体の生産性を高めることに寄与します。

②モチベーションを高められる
フィードバックは、業務への意欲を高める効果があります。上司からの反応がないと、「放置されている」と感じるメンバーも多くいます。相手に対して「しっかり見ている」と伝える意味でも、定期的なフィードバックは必要です。称賛の言葉を送ることで、モチベーションに火をつける効果もあります。

③スキルアップにつながる
キャリア開発の視点でいうと、ひとりで必要な能力をすべて身につけるのは難しいことです。熟練した上司からアドバイスをもらうことで初めて、気づくことができます。だからこそ、部下が困っている際に上司の助言は有意義です。フィードバックで方法論やノウハウを教えることで、相手のスキルアップも支援できます。

④エンゲージメントを深められる
定期的なフィードバックによって、コミュニケーションを取る機会が増え、お互いの信頼関係がさらに深まり、ひいてはチーム全体の雰囲気が良くなる効果も期待できます。上司への信頼感が深まることで、メンバーのエンゲージメントも高まっていきます。

フィードバックはコーチングと混同されやすいですが、コーチングとは、傾聴と質問を繰り返すことで、相手自身の「気づきによる成長」をサポートするマネジメント手法です。フィードバックでは相手の行動を指摘して改善を促すのに対し、コーチングでは受け手自身が自分の中にある問題点や選択肢に気づき、行動できるように促します。両者の違いは、「課題解決に向けてアプローチの仕方」です。

また、コーチングと混同しやすい言葉にティーチングがあります。ティーチングは自分の知識やスキルを「教えることによる成長」を目指すマネジメント手法です。フィードバックはティーチングの中に含まれると考えられています。

人材育成で使えるフィードバックの手法

フィードバックを行うとき、「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」の2つの方向性があります。

■ポジティブフィードバック
相手の行動について「良い点」を評価し、肯定的な言葉で成長を促すフィードバック方法。承認欲求を満たすことで自己肯定感を高め、モチベーションアップも期待できます。肯定的な言葉で、よい点や今後に向けたアドバイスを行います。

■ネガティブフィードバック
相手の行動について「改善すべき点」を指摘し、成長を促すフィードバック方法。行動に改善が見られたら、ポジティブフィードバックで称賛することも忘れないようにしましょう。「正しく指摘」⇒「改善出来たら称賛」を繰り返します。

特にネガティブフィードバックは、相手にとってストレスとなる要因になる場合がありますので、相手との関係性や状況、伝え方を十分に配慮しながら、行うことが必要です。

フィードバックを与える側の上司は以下の心構えで臨みましょう。
・感じた事実を伝えること
・直球を投げること(ただし伝え方には配慮が必要)
・自分のことは置いて、棚に上げること
・相手の成長が目的という利他意識を持つこと

フィードバックを与える側としても必ずしもすべてのことを実践できているとは限りません。ちょっとしたジレンマを感じるかもしれませんが、自分のことではなく相手の行動を軌道修正するために、自分ができる、できない、は棚に上げておき、適切な助言、指摘によって、気づきを与えることに注力しましょう。

フィードバックには、いくつかフレームワークがあります。ここでは、代表的な3つをご紹介します。

フィードバックのフレームワーク

①SBI型
状況を説明したうえで具体的な行動をピックアップし、その行動に対する感想を述べる手法です。Sは「Situation(状況)」、Bは「Behavior(行動)」、Iは「Impact(影響)」を表しています。物事の原因と結果を分かりやすく伝えられるため、相手にも納得してもらいやすい手法で、ポジティブ・ネガティブフィードバック両方に使えます。

②FEED型
Fact(相手の取った行動)⇒Example(その行動を指摘する理由)⇒Effect(その行動による影響)⇒Different(次回への代替・改善策) の流れでフィードバックを行います。相手の行動から次回の改善策まで一連の流れで伝えられるのが特徴で、相手に行動変容を促しやすい伝え方です。

③KPT型
エンジニアの開発現場で振り返りによく使われる手法で、Keep(今後も続けるべきこと)⇒Problem(今抱えている課題)⇒Try(改善すべきこと)の順で伝えるフレームワークです。上司とメンバーがコミュニケーションを取りながら進めていくことが多く、会話を通じてメンバーの自発的な行動改善を促すことができます。

人材育成でフィードバックの質を高めるポイント

フィードバックは伝え方やタイミング、状況によって効果が変わることも多いです。また、フレームワークをどう使うか、ポジティブ・ネガティブフィードバックを使い分け方に迷うこともあります。
そこで、フィードバックの質を高めるポイントを6つ紹介します。

①具体的に伝える
フィードバックの内容が抽象的だと相手にうまく伝わらず、そのため、できるだけ具体的に伝え、相手に改善策をイメージさせることが大切です。具体的にどのような行動がよい・悪いのか、行動をどう改善していくべきかを伝えましょう。

②リアルタイムで伝える
フィードバックは、なるべく時間を空けずにリアルタイムで行う必要があります。行動してから時間がたつと、フィードバックする側もされる側も、詳細を思い出せない場合があるためです。あまりに遠い過去について指摘をされても、相手は実感が伴わず、有効な学びにつながりません。だからこそ、上司は頻繁に部下とコミュニケーションを取る習慣をつけておき、できるだけ相手の行動から日が浅いうちにフィードバックをしましょう。

③人にではなく行動に対して行う
ありがちな失敗が、相手の「性格」や「人格」に対してフィードバックを行ってしまうことです。性格というものはそう簡単に変えられるものではなく、人によっては生き方そのものを否定されているような気持ちになってしまいます。そのため、フィードバックを相手の「行動」に対して行うことで。フィードバックを受けた相手も、行動なら意識の持ちようで変えることができ、効果も実感しやすいです。

④実現可能なものにする
フィードバックは相手の「行動」に対して、指摘した背景や意義についてしっかり説明します。上から目線の机上の空論にならないように指摘の内容は、実現可能なものにすべきです。また、フィードバックの相手によってスキルレベルが違うため、実現できることも違います。メンバーの年次や経験に合わせてアドバイスを行います。

⑤本人の意志を確認する
考え方の押しつけは、相手の不満を募らせてしまいます。そのため、フィードバックしたあとには、できるだけ相手に理解できたか・納得したかを確認することが大切です。軌道修正を促すには、相互コミュニケーションで相手の気持ちをくみ取る姿勢が欠かせません。

⑥状況・態度に気をつける
フィードバックは、少なからず相手に心理的なストレスを与えてしまいます。特にネガティブフィードバックの場合は、相手が「叱られる」「否定される」と思い、萎縮してしまう場合もあるかもしれません。そのため、必要以上に強い語調や高圧的な態度は避けるようにしましょう。
また、フィードバックは決して「恥をかかせること」が目的ではありません。そのため、あえて全員の前で指導するような状況は避け、「1対1」を心がけ、できるだけ相手がリラックスして話を聞ける場所にしましょう。

「6つもあるのか!」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。確かに今すぐ実践できることもあれば、メンバーとの信頼関係の度合いによって実践が難しいものもあります。
さらにフィードバックの質を高めるために、フィードバックを受けたメンバーに「今のフィードバックはどうだった?」と感想を求めて、ご自身のフィードバックの改善点を見出してみてはいかがでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

定期的な面談や1 on 1ミーティングでも活用できるフィードバックの効果、質を高めるポイントについて解説しました。相手の行動に対して改善点や評価を伝え、軌道修正を促すことで成長を促進する目的のフィードバックですが、伝える相手、状況に応じてフィードバックを使い分けることが求められます。

■フィードバックの2つの方向
・ポジティブフィードバック
・ネガティブフィードバック

■フィードバックの3つのフレームワーク
①SBI型
②FEED型
③KPT型

■フィードバックの質を高める6つのポイント
①具体的に伝える
②リアルタイムで伝える
③人にではなく行動に対して行う
④実現可能なものにする
⑤本人の意志を確認する
⑥状況・態度に気をつける

今回ご紹介した内容を参考に成長を促進するフィードバックを行い、メンバーやチームの成長、さらに働きやすいチームづくりにつなげてみてください。

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