人財育成の仕組みづくり

ストレスに対処するために人材育成の担当者が知っておくこと

現代は、ストレスフルだと言われています。技術の進化や意識、世論の変化もどんどんスピードが増しており、その変化に対応しなければならない一方で、個性の重要性、多様性が求められています。やるべきこと、考えることが仕事でも人生でも多い現代人が抱えるストレスについて解説します。

みなさんはストレスを解消する方法がありますか。皇居周辺をランニングする、好きなアーティストのライブに行く、友人と話すことなどそれぞれのスタイルでストレスを解消していると思います。マインドフルネスの効果を上げるヨガやピラティス、めい想のワークショップがIT企業を中心に開催されるなど社員のメンタルヘルスと仕事の質と関係していることに気づき、対策を取っている企業も多くあります。ストレス発生するメカニズム、対処するストレスコーピングと人材育成の場でどうストレスコーピングを取り入れるかについて解説します。

そもそもストレスとは?

そこから約50年、1984年に心理学者のラザルスが「認知評価理論」を発表し、心理学的なストレスモデルとして、ストレスの発生メカニズムとそのストレスへの対処法をまとめました。
ストレスの発生メカニズムは以下の図のとおりです。

ストレスの発生源ともいえる「ストレッサー」は温度や湿度、長距離通勤など物理的なもの、騒音や工場の粉塵など科学的なもの、花粉やウィルス、細菌など生物的なもの、人間関係などの社会的なもの、個人的な悩みなど心理的な刺激です。その刺激が有害、無害か自分にとっての影響の大きさを一次的に判断し、無関係や無害、肯定的なものであればストレスは感じません。ストレッサーを有害と認知したときにストレスフルとなり、対処するためにストレスコーピングを行います。対処しきれないとなれば身体は好ましくない反応を示します。

ストレス反応の例としては、
心理面:抑うつ、不安、怒り、焦り、イライラ、緊張、自己効力感の低下、落ち込みなど
身体面:過呼吸、胃炎、動悸、血圧上昇、疲労感、食欲不振など
行動面:ストレス性過食症、アルコール依存、暴力的・闘争的になる、出社拒否など
このような慢性的なストレス反応の状況の陥る前に、ストレスに対処するストレスコーピングを行い、うまく解消、対処することが大切です。

人材育成の担当者が押さえておくべきストレスコーピング

ストレスコーピングの「コーピング」とは、問題に対応する、切り抜けるという意味があり、「ストレスコーピング」は「ストレスにうまく対処しようとすること」を指します。ストレスは良い反応を起こす場合もありますが、たいていは身体にとって好ましくない反応を引き起こします。ストレスコーピングの目的とは、ストレスに対処し、自分を楽にすることで、これらの好ましくない反応を和らげ、心身の健康を維持していくことです。

ストレスコーピングには、5つの種類があります。

① 問題焦点型コーピング

直面しているストレッサー物・人・状況などに直接働きかけ、根本的な問題解決を図る方法です。自分の力だけではなく、人の力を借りる、解決を諦め問題自体から回避するということもあります。
まずストレスコーピングでは問題焦点型を行いますが、原因解消のために無理に考えを変えようとするあまり疲れてしまう、対処方法が分かっても実行に移せず、そのこと自体がストレスになる場合があり、加えて、ストレスフルな環境を改善するために周囲の人を巻き込むケースもあります。それがきっかけで人間関係を悪化させてしまうこともあるというデメリットもあることも認識しておきましょう。

② 認知的再評価型コーピング

ストレッサーに対する評価(認知)を変えることでストレス反応を軽減させる方法です。物事を見る視点を変える、ポジティブに捉えるなどがあります。考え方、物の見方を変えるという点では問題焦点型コーピングと近しいかもしれません。

③ 情動焦点型コーピング

ストレッサーを対象とせず、ストレスや不満を人に話す、対話による精神的アプローチでストレス反応を緩和させる方法です。感情を発散させるだけではなく、時には心の中に感情をしまっておく抑圧もその一つです。
情動焦点型コーピングは感情を発散させ、ストレスを緩和させますが、そもそも不満に感じていることを本人が自覚していない、ストレッサー自体が解決できていないため、問題焦点型コーピングと組み合わせて使います。

④ 気晴らし型コーピング

趣味やレジャーなどを通じて、蓄積しているストレス反応を解消する方法です、一般的に言われるストレス解消に当たります。情動焦点型コーピングとの違いは、身体を動かす、ある場所に行って楽しむという身体的なアプローチを行います。

⑤ 社会的支援探索型コーピング

人に頼ることでストレスを緩和させる方法で、家族や友人、上司などにサポートを求める対処行動です。人の力を借りる点では問題焦点型コーピングの一種ですが、相談するという対話の面では情動焦点型コーピングの一種とも捉えることができます。

人材育成の担当者が5つのストレスコーピングの方法を知り、時には自らのストレス解消、発散を行い、メリット、デメリットを感じておくことが必要です。ストレスコーピングテストや「コラム法」といったストレスコーピングの実践方法を調べ、自身と社員のメンタルヘルスを維持、向上させる施策へのヒントとして活用していきましょう。

ストレスを解消する施策を人材育成の場で提供する

社員のメンタルヘルスを維持、向上させるためにどのような施策が考えられるでしょうか。多くの企業では、定期的にメンタルヘルス講座や研修を開催していることでしょう。加えて、メンタルヘルスチェックを行い、ストレスフルになっていないか、気になる社員には外部機関の産業医などにカウンセリングを依頼するなど対応していると思います。

また、社内のコミュニケーション活性化のため、メンター制度やトレーナー制度で、社員同士で、気軽にアドバイスやサポートを求め合える仕組みも作っているでしょう。1 on 1で上司と部下がコミュニケーションを取り合い、その中で上司はコーチングスキルを活用し、部下が目標達成や自己成長を実現する手助けができるような人材育成の機会を設けています。

仕組みや研修を準備し、提供することはもちろん重要です。それぞれの仕組みや研修を通じて、ストレスとは何か、それに対しどう対処すべきか、時にはストレスコーピングのテストを実施し、社員自身がストレスに対処するときのタイプを理解、認識してもらうコンテンツを入れ、自己理解を深めてもらうことが一番重要です。

3年目、5年目、10年目といった節目の年次や昇格時などの機会に、研修などで自分と向き合い、過去から現在までのキャリア、モチベーションの軌跡、今後、自分がどうなりたいか、どうしたいのかをじっくり考える時間を提供することで忙しい毎日から少し離れ、社員にゆっくりと時間を与える施策も検討してみましょう。ある会社ではそれを「自分のことを考える時間をプレゼントする」として研修、面談、休暇制度と紐づけていました。

物理的なストレス緩和の施策も行いつつ、社員の内面により深く関わるモチベーション、メンタルヘルスの維持、向上を一緒に検討してみてください。

モチベーションのポイントは、こちらのブログを参照ください。
モチベーションがなぜ人材育成で重要なのかを考える

まとめ

いかがだったでしょうか。
社会情勢により社会構造や社会生活が変化し、社会生活を支える技術の変化もあり、私たちの周りを取り囲む外部環境は大きく、加速度的に変化しつづけています。個人に目を向けると働き方の変化、ライフワークバランスの最適化といった社会と個人のバランスも変わってきています。

残念ながら、経済協力開発機構(OECD)の調査で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、日本国内でうつ病・うつ状態の人の割合が2倍以上に増加したことが明らかになりました。またある調査では、ビジネスパーソンの約20%が高ストレス状態の自覚がなく、突然休職するリスクをはらんでいるという結果が出ていました。

諸外国では、個人でカウンセリングを受けることが当たり前です。日本でもさらにメンタルヘルスの重要性がより高まり、人材育成、福利厚生といった会社の施策、取組みが求職者の会社を選ぶ条件の上位となることでしょう。人材育成の担当者は、人材育成という視点だけではなく、広く会社の将来にも関わるということを認識しておきたいものです。

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