人財育成の仕組みづくり

人材育成の研修効果を最大化させるクラスマネージャーとは?

コロナ禍で働き方が多様化する中、社員、受講者の学び方も変化しています。従来から研修効果を最大化させるためには?という課題が人材育成、特に研修において挙げられ、内容や研修手法といった手段で課題解決が図られてきました。しかし、研修運営の役割を担う「クラスマネージャー」という人の面ではあまり語られていません。単に円滑に研修を運営する役割だけではなく、研修をコストから投資として効果を発揮させるために、学びが変化する中、より重要な役割を担うことになります。本記事では、研修運営に携わり、研修中、講師とは違う立場で効果を最大化させる支援を行うクラスマネージャーについて解説します。

人材育成の現場で注目 クラスマネージャーの役割とは?

皆さんは、「クラスマネージャー」という名称を目にしたことがありますか。人材育成、特に研修を生業としているとよく耳にするのですが、企業においては、人材育成担当者が兼任しています。「クラスマネージャー」とは明確な定義はありませんが、主に研修当日の準備や受講者管理など研修を円滑に運営する役割を担い、「研修事務局」や「コーディネータ」などと呼ばれることもあります。

1日、2日のテーマを絞った研修を担当することもありますが、1か月以上連続でコースが設定されている新人向けの研修でクラスマネージャーが置かれることが多く見られます。長期間設定される研修では、各テーマが繋がりを持って構成されており、テーマごとに講師が違う場合がほとんどです。そのため、研修全体の繋がりや受講者の様子を見守り、支援する役割を担うクラスマネージャーの存在が重要になります。特にこのコロナ禍でオンライン形式での研修が増え、集合形式での研修とは違う環境で、受講者の不安や理解度の遅れを察知し、ケアすることが求められ、新人研修では必須の役割として置かれているケースが増えています。

企業での人材育成担当者が兼任している場合、その担当者からは「講師がいるし、講義内容について詳しく知らないので、どうアドバイスすればいいのかわからない」、「OJT担当者や配属先の上司、先輩がいるのに、表立って支援するのは・・・」といった声を耳にします。確かにその気持ちもよく分かりますが、受講者が組織の中で成長し、活躍するのを目にしたときの喜びも感じているはずです。今回は企業内で人材育成担当者として兼任、また専任のクラスマネージャーとして経験した中で得たヒントを紹介します。

人材育成の研修効果を最大化させるクラスマネージャーの着目ポイント

クラスマネージャーの役割は、研修の運営が主なタスクですが、そもそも研修を行う目的は、社員、受講者が研修で学び、「一人ひとりの能力を向上させることで、仕事の質を高め、顧客のニーズに応えられる人材を増やす」ことです。そのため、クラスマネージャーは、研修で社員、受講者の学びを支援し、研修全体の効果を最大化させていくことが求められます。
では、研修効果を最大化させるために、どのような点に着目すれば良いのでしょうか。

研修効果を最大化させるためのポイントは2つあります。
① 研修のゴール、何を学んでほしいかを理解しているか
② 学びの効果をアップさせる仕組み、ツールを把握しているか

① 研修のゴール、何を学んでほしいかを理解しているか

人材育成の目的があり、企業としてどういう人材に育ってほしいか、人材像を定義します。大切なことはその人材育成の目的が経営の目標や目的とつながっていることを認識しておくことです。(詳しくは、当ブログ「人材育成の目的の大切さとは?研修やeラーニングが活用されない理由」を参照ください)

そして、研修の体系化を行う際、その人材像の定義から役職や年次、担当する役割ごとに求められる詳細にタスク(Task)・スキル(Skill)・態度(Attitude)で分類し、研修へ展開しています。そこから研修ごとに学んでほしいことをゴール(到達目標)として設定します。

専任であれ、兼任であれ、クラスマネージャーは研修コース、研修ごとのゴールを理解しておくことが重要です。つながりや研修における重点ポイントを把握し、社員、受講者に学んでほしい、期待されていることを論理的に説明できるまで整理しましょう。

② 学びの効果をアップさせる仕組み、ツールを把握しているか

社員、受講者の学びの効果をアップさせる仕組み、ツールはたくさん存在しています。研修形式には一つの場所に集まる集合研修、Zoomなどの会議システムを使ったオンライン研修、その両方を同時に実施するハイブリット研修があります。また、講義だけの形式から、あるケースを元に課題解決を図る演習形式、実際の仕事を想定しながら行う実習形式など、ゴールやテーマ、受講対象者を想定しながら適切に組み立てられています。

研修内の補足資料や演習の回答などは、集合研修では直接渡すことができましたが、オンライン研修ではチャットを使って配布、グループウェアでの配布など使い分けます。研修終了後に提出する報告書も、以前は手書き、WordやExcelを使い作成していましたが、現在では、学習管理システムを通じて、Web上で作成、提出できるようになっています。

まずは、研修の形式や講義の形態、学習方法はもちろん、学びの効果をアップさせる仕組みや利用するツールについてクラスマネージャーがそのメリット、デメリットをあらかじめ学んでおくことが必要です。

そして、理解を深めるための仕組み、ツールもクラスマネージャーは使い方とともにその目的を理解しておくことで「決められたルールだからやって」ではなく、社員、受講者からの質問に適切に応えることが可能となります。また、OJT担当者や部門の責任者、人材育成担当者それぞれの人材育成における役割、サポートの内容も把握しておくことで社員、受講者の変化を相談、報告しやすい関係を構築することができます。

特に長期間の研修では予想もしなかったトラブルやイレギュラーな課題が発生します。迅速に対応できるように事前に仕組みやツールを把握しておき、必要に応じて、改善していくことは、講師とは違う立場から研修効果を最大化させる支援となり、クラスマネージャーの大きな役割でもあります。

クラスマネージャーが一人ひとりの可能性を信じて、人材育成を支援する

では、クラスマネージャーはどのように社員、受講者と向き合って、学びのモチベーションを維持し、効果的な学びを促進していけばよいのでしょうか。

それには社員、受講者本人の特性や個性を観察し、タイミングよくフィードバックを与えることが非常に大切です。前提として、クラスマネージャーは一人ひとりの可能性を信じ、決して本人の学びに対して自身の判断を持ち込まず、伸ばすことに注力する、という姿勢が重要です。

新人研修など長期間にわたる場合、初めに研修を通じての目標設定を成果物として残すことがあります。最終日にその成果を発表することが多いですが、より効果を高めるために、期間中、目標に対し、現在の状態はどうかと振り返りの時間を設けてみましょう。日々の研修報告書に振り返りの視点を入れる方法もあります。振り返ることで社員、受講者本人が自身の研修目標を自覚し、現状と目標のギャップ、解消するための行動は何かと気づきを得られると、勝手に、というと語弊がありますが、自らで成長していくものです。

講義や休憩中の過ごし方、ちょっとした雑談、表情からも本人の状態を推察することができます。研修の理解度を測るためにテストやアンケート回答も含め、行動変容や態度の変化に気づく力、目配りする力がクラスマネージャーには求められます。変化には違和感が伴います。ひとつの事実に捉われず、今は本人が悩み、伸びようと努力しているときなのか、調子が良く、学びを楽しんでいるときなのか、モチベーションのプロセス全体で見守ることが肝要です。

良い変化もあれば、悪い変化もあるでしょう。良い変化であれば、後でも良いのですが、悪い変化であれば、すぐに、直接、本人へフィードバックを行うことです。時には叱ることも必要ですが、あいまいに叱る、感情的に怒ることは絶対にNGです。

フィードバックにもポジティブなものとネガティブなものがあります。いきなり本題に入らず、「今日、講義中に居眠りしていたけど、疲れてるかな。」とクラスマネージャーが見た事実を伝え、本人がなぜそうしたのか、その原因を知るために質問を重ねて、フィードバックと時にはアドバイスを伝えます。

「これ以上関わるとおせっかいかな」と思っても、社員、受講者に「私はあなたを理解したいと思っている」という寄り添う気持ちを伝える努力は惜しまないことで、叱ることやネガティブなフィードバックも本人にとって、モチベーションや目標達成の意欲となることを覚えておきましょう。

まとめ

コロナ禍の中で働き方の変化が生まれ、それに伴い、研修や学びの方法も多様化しています。クラスマネージャーにも求められる役割が大きく変化しています。単に学びを支援するだけではなく、「一人ひとりの能力を向上させることで、仕事の質を高め、顧客のニーズに応えられる人材を増やす」ことが重要です。そのために社員、受講者本人が研修を受けることでその効果を現場に持ち帰り、実践する中で成長サイクルを最大化してもらうために何を行うべきなのでしょうか。つまり、従来の受講者だけではなく、様々なステークホルダーと調整、連携するユーザー視点と研修、人材目標を達成するというマネジメントの視点も必要となってくるのです。

2つのポイント
・研修のゴール、何を学んでほしいかを理解しているか
・学びの効果をアップさせる仕組み、ツールを把握しているか

研修運営を円滑に行うだけではなく、ユーザー視点、マネジメント視点でこのポイントを考え、さらには、一人ひとりの可能性を信じ、寄り添うことで研修がコストではなく、投資として研修が企業の中で効果を最大に発揮させることができます。

もちろんコーチングやティーチング、フィードバックの手法、研修のデザイン手法など方法論を学ぶことも必要ですが、まずは人材育成、研修の目的やゴールを抑え、研修効果を最大化させるために自らが何を行う必要があるのか、を考えることがクラスマネージャーには必須のスキルと言えます。

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