人財育成の仕組みづくり

人材育成の見える化を導入するときに知っておきたいポイント

企業の成長において重要なことは何かと問われたときに「人材育成」は必要不可欠な要素のひとつとして挙げられます。一言で「人材育成」といっても、力を入れなければいけないポイントは企業によって異なります。自分たちの会社の強みと弱みをしっかり把握できているかどうかによって成長度合いにも影響が出てきます。強みを今後も武器として使うためには何を強化したらいいのか、弱みをそのまま放置せず少しでも成長に繋げるためにはどうしたらいいのかを考えるためにはまず現状を把握することが重要になります。そこで、今回は【人材育成の見える化】と導入した際のメリットをご紹介します。

人材育成の見える化とは?

「今年こそは人材育成を重点的に行おうと思っていたのですが、何から始めたらいいか全然わからないまま手つかずになってしまって……。」
多くの企業で人材育成の優先順位が低くなってしまう原因の一つとして、社内リソースの把握不足があげられます。
そのため、まずはどのジャンルで育成すべきか、自社の人材には何が足りていて何が不足しているのか、自社ビジネスで常に結果に結びつける為にはどんな分野を強化するべきなのか、効果的な人材育成をするために自社にはどのような課題があるのかを明確にしておかなければいけません。

社員の能力や経験、どのくらい仕事ができるかなど、その人を見ただけで瞬時にわかる!といった特殊能力があれば仕事の隙間時間などを活用しながら効率よく自社の現状分析を進めることができると思います。しかし、実際は普段の仕事ぶりを細かく観察する以外は、感覚的な部分に頼って判断することが非常に多く、しっかりとひとりひとり把握するためには時間がかかります。
そこで重要になるのが、【人材育成の見える化】です。

以前ある企業の人事の方に「【人材育成の見える化】は社内の人材リソースを把握するためにも重要なのはわかってるんですけど、イメージがわかなくて困ってるんです。」と相談を受けたことがあります。
そこで例として挙げたのがカードバトルに使用するトレーディングカードです。トレーディングカードには攻撃力、防御力、そのほか様々な情報が記載されており、見るだけでそのカードがどのようなものかを把握することができます。
それと同じようにパッと見ただけではわからない社員の能力や経験、どのくらい仕事ができるかというものを、見てわかる情報に変換します。これが見える化です。

最近では携帯向けアプリゲームにも戦国時代をモデルにした攻略ゲームに出会う機会が増えましたが、陣形や陣営内の人材配置をプロフィールなどのデータを用いて攻略を進めていくものもあり、社内の人材配置の考え方に非常に似ている印象を受けました。
このように、社員のプロフィール情報をまずは把握し、その情報をさらにグラフやヒートマップなどの目で見てわかる情報にうまくまとめることによって、社内のリソースを把握することができます。

人材育成見える化のメリット

社内にどのような人材がいるのか、企業の全体目標に対して現在どのような段階にあるのか、このまま人材育成を経てどのような企業に成長することができるのかなどを把握するために、それぞれの社員が持つ力という目には見えづらいものを目で見える情報に変換する。そして社内の人材育成の状況を視覚的に理解できるようにし、企業の成長につなげていくことが【人材育成の見える化】を行う主旨です。

これは手間のかかる作業ですが、見える化を導入することによって会社にとって様々なメリットがあります。

1つ目のメリットは会社の強み、弱みの洗い出すことができます。
人材育成の見える化を進めていく中で、自社にどのような人材がいるのか、会社としてどんな能力・知見を有しているかがわかるようになります。社内のリソースが把握できることにより自社の強み・弱みが見えてきます。

人材育成の見える化を推進している企業の営業の方とお話をしたときに「僕は入社した時からほとんど営業で外出続きだったので社内のことを全然把握できていませんでした。しかしコロナ禍でリモートワークが導入されたのを機に、会社で社員のプロフィールや過去も含めた担当業務の一覧が確認できるような名簿が作成されたんです。そこで過去の事例などを他部署の人にも質問しやすくなり、営業にもつながる情報も得られるようになりました。」と社内で今までとは違う交流が生まれ、営業成績も上がった話を伺いました。

コロナ禍によりリモートワークを導入された会社も増えていて、コミュニケーションが今まで以上に取りにくい状況の中で会社側からきっかけを提供することにより社員同士で情報交換を行い個々の成長のきっかけを作り、弱みを補い強みにつなげることもできるのです。

2つ目のメリットは自社の現状がわかることにより、自社が行っているビジネスやこれから注力したいビジネス分野を遂行するのに必要な人材育成を行うことができます。

ある企業の人事の方は失敗談をお話ししてくださいました。
「前期から既製品の販売だけではなく、新たにお客様の要望を聞きながらカスタマイズができる製品の販売にも注力し始めました。ところがプロジェクトの進捗遅延が多発。今までと変わったことといえばコロナ禍によるリモートワークの導入だったためコミュニケーションがうまく取れていないのではないかと思い、今期から定例を週に2回導入しました。でも今期も進捗遅延は改善されないどころか、定例により作業時間が減って前期よりさらに遅延する可能性があるという報告も上がっています。原因をしっかり明確にしてから導入すればよかったと思いました。」
見える化が正確にできていないと、判断があやふやな感覚的なものになってしまい、望まない結果を生む場合があります。

では今回の場合どうすればよかったのでしょうか。

今期プロジェクトメンバーに詳しく話を聞いたところ、原因はメンバーに既製品製作経験者しかいないため、お客様の要望を聞く経験に乏しく、やり取りに時間がかかりすぎていることだと判明しました。
今後会社が成長するためにも、見える化で「お客様とやり取りできる人材が少ない」というのがわかれば、“顧客とのコミュニケーション”をテーマにした研修など、適切な人材育成ができたでしょう。

企業の円滑な経営活動を行う上でも企業をこれから成長させていく上でも、企業戦略を遂行できる優秀な人材の確保は必要不可欠です。見える化で得た情報を適切に活用し、必要な分野の人材育成を行えば、自社の企業戦略と同じベクトルで人材育成を進めることができます。

3つ目のメリットはプロジェクトや部署の人材配置に活用できます。
人材育成には時間、費用、労力をはじめとするコストがかかります。そのためプロジェクトや部署に人材が不足しているとき、必ずしも人材育成だけが正解というわけではありません。対応に必要な能力や経験を持っている人がいた場合、配置転換をするというのもひとつの方法です。
人材育成の見える化ができていれば、どのような人材が不足しているのかを把握することができると同時に社内で補うことができるのかどうかまで判断することができるのです。

先ほどの例の場合、お客様の要望を聞くことに慣れている人材を連れてくればいいわけです。

このように、人材育成が見える化によって、さまざまなメリットがあり、企業の成長にも大きく貢献することができます。

ここまで話をしてきて、自社にも導入をしてみようと思ってくださっている方もいるかと思います。

では人材育成の見える化を実施する際に、気をつけるべきポイントはなんでしょうか。

人材の見える化を行った場合、どうしても資格などの「スキル」にとらわれがちになってしまいます。しかし、実際の職務遂行能力は「スキル」だけでは表しきれないのです。そのため、「スキル」だけではなく「タスク」の観点が必要となります。
そこで、ポイントの1つ目としてまずは自社のビジネスにどんなタスクがあるのか洗い出しをすることから始めてみてください。それぞれのタスクを遂行するために、どんなスキルが必要かを洗い出すことによって最初に自社ビジネスに必要なスキルを明確にすることができます。

ポイントの2つ目として自社の社員が自社のビジネスのタスクにおいて、どの程度経験を保有しているかを明確しましょう。
例えばひとつのタスクにおいても「一人でやっている」、「上司に教えてもらいながらやっている」、「研修に参加したため知識として知っているけどやったことがない」など人によって経験値が異なります。
それと同時に自社の社員が、自社のビジネスに必要なスキルにおいて、どのレベルかも明確にしましょう。スキルの場合「知っている」、このスキルは「業界でも認知されるレベル」、このスキルは「使いこなすことができる」など、経験値によって使いこなせる段階も人により様々になります。

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では、業務を見える化し、必要な人材を明確化する辞書として、 i コンピテンシディクショナリ(iCD)を提供しています。自社ビジネスにおけるタスクやスキルの洗い出しをやりたいと思っていても進んでいないという場合、こういった業界標準をうまく活用していくのがおすすめです。

まとめ

いかがだったでしょうか。

これからも企業を持続的に成長させるためには、まずは己を知ることも大事になります。
そこで「人材育成の見える化」を始めることにより、現状の把握ができ企業の今後の課題を見つけることにも繋がります。

自社企業の弱みと強みのそれぞれを把握し、対策を考えながら強化することによって、企業の成長にもつながると思いますので、まずは人材の見える化から始めてみてはいかがでしょうか。

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