タレントマネジメント

タレントマネジメントを最適配置に活かすヒント

少子高齢化が進み、労働人口が減少していく中で、社員の能力を最大限に引き出し、企業の生産性・業績を高めていくには人員配置の最適化が必要不可欠です。そのために、社員ひとりひとりのキャリアプランを事前に確認しておくこと、また社員のスキルセットを把握しておくことは、最適配置をスムーズに行う上で重要な成功要因となります。

社員の情報を管理し、分析結果を見える化する考え方としてタレントマネジメント、管理するツールとしてタレントマネジメントシステムが有効です。

今回は、適能適所の最適配置を行うために、知っておくべき基本的な知識やプロセスを解説し、タレントマネジメントと連動した実践的な使えるアイデアやヒントをご紹介いたします。

最適配置とは?~タレントマネジメントで適能適所を可能にする~

最適配置とは「人員配置の最適化」のことです。つまり、社員のスキルや適性・キャリアなどを踏まえて、適材適所に異動/配置する「人員配置」というヒトの再分配に関わるマネジメント全般を最適化することです。

一般的には適材適所という言葉がよく用いられますが、弊社ではより社員のスキルや適性・キャリアという個人の能力に適したという意味で「適能適所」という言葉で紹介しています。

人員配置を最適化する目的は以下の通りです
・経営目標や経営計画の達成
・組織の改革
・人材育成
・社員のモチベーション向上

在籍している社員を有効活用する目的だけでなく、社員の働き方に配慮する目的で人員配置が行われる場合もあります。人員配置によって育児・介護などによる休業や時短勤務中の応援態勢を整える事例なども増えています。社員のモチベーション維持、パフォーマンス発揮を妨げる要素を取り除くためにも、人員配置は有効です。

人員配置の種類として代表的なものは以下の6つです。

  1. 採用

部署やポジションに不足が発生した場合、職種や担当業務などの人員配置をあらかじめ決めた上で募集活動を行うのが一般的です。人材採用には大きく分けて新卒採用と中途採用の2種類があります。中途採用は欠員補充の意味合いが強く、人手不足の部署にそのまま配属されます。一方、日本の新卒採用は、人材育成の一環として複数の部署をジョブローテーションするケースが多いです。

新たに採用する場合は、新しい風を吹き込んで組織を活性化する効果や、これまで得られなかった発想や知見を得る効果が期待できます。

  1. 人事異動

本人の適性と希望を考慮して、能力を最大限に発揮してもらうために、あるいは人材育成の観点から、今よりチャレンジングなポストに配属して、スキルアップをはかることもあります。

社員の担当業務や部署を変更して、計画的な成長を促すジョブローテーションは定期的に行いますが、新しいプロジェクトや組織の発足、部門の統合など突発的に行う場合もあります。また、社内での人事異動だけでなく、人事交流やノウハウの指導・獲得を目的として関連企業などに社員を出向させる場合もあります。

  1. 役職変更(昇進・昇格)

役職変更も人材配置の一種です。職位が上がる、新たに役職を得ることを指します。社員のモチベーションやエンゲージメント向上にもつながるため、人材育成の観点からも効果的な人材配置の手段のひとつですが、一方、業務の成果や勤務態度によっては一旦降格させて、社員の奮起を促す場合もあります。

役職変更によって空きポジションができれば、他の従業員にもステップアップのチャンスが生まれ、組織全体の活性化につながります。上司・管理職が変わることは、一緒に働く社員の環境も変化する可能性があるため、組織全体に及ぼす影響も考慮することが必要です。

  1. 雇用形態の変更                    

雇用形態の変更も人材配置に含まれます。契約社員から正社員への変更や、フルタイムから時短勤務への変更などが一例です。

  1. 解雇・リストラ

解雇・リストラも人材配置の一つと考えられています。事業縮小や業績が悪化した場合に、経費削減の一環としてリストラが行われることがあります。また、有期雇用契約で働く契約社員などに雇止めを行う場合もあります。

人員が減ることで残された社員の負担が増すだけでなく、モチベーション低下や連鎖退職も懸念されます。そのため、関係する社員にもリストラ・解雇を決めた背景を説明するなどの配慮が必要です。

  1. 組織体制の変更

企業の組織体制が変わる場合も、人材配置が行われます。組織の新設や統合・廃止などさまざまな形で行われますが、経営戦略の見直しの一環として行われる場面も少なくありません。特に中小企業やベンチャー企業では、事業の進展や組織の成長度合いに応じて柔軟に組織変更が行われる傾向があります。

配置する人材のスキルやポテンシャル、人間関係によって組織・会社のパフォーマンスに大きく影響するため、人材配置にあたっては会社の将来像や人材の適性や能力を慎重かつ客観的な判断することが求められます。

最適配置で得られる効果~そんな時こそ、タレントマネジメントの出番~

最適配置を行うことで得られる効果は多岐に渡りますが、反面、適切に行われないとその効果が得られないばかりか、組織の成長を阻害する要因となり得るため、注意が必要です。

最適配置の効果としては3つ挙げられます。

  1. 業務の効率化・生産性の向上

従業員の希望や能力に応じて人員配置を最適化することで業務を効率化させ、組織・企業の生産性向上につなげられます。業務に必要な能力を有し、適性のある人員を組織に配置し、社員ひとりひとりが高いパフォーマンスを発揮できるよう後押しすることで、生産性を向上することが可能です。

一方で、社員は配置後に新たな業務を一から覚える必要があります。異動元の組織でも業務の引継ぎが必要であり、どちらの組織においても配置転換を行ったあとは一時的に業務のパフォーマンスが低下することを考慮しておきましょう。

  1. エンゲージメント向上・離職率の低下

企業は、社員が能力を発揮し活躍できる場を与えるための人員配置は、対象となった社員が業務を通じて自身の成長や自社からの評価を感じるきっかけとなり、エンゲージメントの向上が期待できます。最適配置を行うことで、業務の幅が広がれば長く働き続けたい気持ちも生まれ、離職率の低下につながるだけでなく社外へのノウハウ流出も避けられます。

一方で配置転換のタイミングによって、社員の成長が中途半端になる、あるいは新たに習得した能力やスキルを磨く機会が失われてしまう、成長の速度が鈍化してしまうといった弊害が生じます。また、配置転換された社員は新たな組織で一から人間関係を構築する必要があり、場合によっては転勤といった外部環境も変化します。配置転換は多かれ少なかれ不安を感じるため、適切なフォローが必要です。

  1. 人件費・採用コストの削減

最小限の人員数、最小限の稼働時間で組織の業務を遂行することが期待できます。こうした人員配置は、人件費の最適化につながっていきます。つまり、最適な人員配置を実践することで社員と組織が高いパフォーマンスを実現でき、離職率も低下し、その結果、企業の人件費や採用コストの削減につながり、利益の確保につながります。

このように最適配置を行うことで得られる効果を十分発揮するためには、組織・社内の現状を見える化し、社員のスキルや適性を一元管理することで、経営戦略の変化に応じて迅速に対応することができます。

従来のExcelや紙での人事管理では、せっかく集めた情報をさらに加工する必要があり、人事担当者がデータ化を行うため、作業負担が増大し、管理も大変です。また、人事担当者はもちろんのこと、現場のマネージャーは即時にその情報を活用しきれないことは企業の損失にもつながります。

タレントマネジメントシステムでは、人員配置のシミュレーションはもちろん、社員の情報を一元管理でき、即座にその情報を関係者に展開できる即時性や利便性が大きな特徴です。社員のスキルや適性、キャリアプランの情報収集から分析までできるため、タレントマネジメントの仕組みを導入するときには併せてタレントマネジメントシステムを入れることで、人事担当者の負担軽減、業務の効率化が達成できますが、それ以上に組織に様々な恩恵を与えることでしょう。

タレントマネジメントを活用した最適配置を実現するプロセス

少子高齢化が進み、労働人口が減少する中、どの企業においても人手不足の傾向は続きます。また、社会環境の変化や労働法規の改正もあり、労働時間の規制や育児・介護休業の充実など働き方改革が求められており、企業内でも生産性向上を早急に進める必要に迫られています。

社内でのジョブローテーションやリテンション、リスキリングで多能工化を推進するといった施策を通じて、業務効率化や生産性向上を図り、最適配置を実施している企業でも以下の理由から課題を持っていると聞きます。

・職種の専門性が高く、他の職種に配置転換しづらい
・職種や処遇といった労働条件の変更に対し、社員からの同意を得られにくい
・一部のハイパフォーマー人材に業務が集中しており、他の社員で代替できず、配置転換しづらい
・経営環境の変化のスピードが速く、中長期的な視点での組織改革、人員配置が行えない

これらの課題を解決するひとつの手段としてタレントマネジメントが役立ちます。
では、最適配置を効率的かつ効果的に行うにはどのようにすればよいのでしょうか。

  1. 理想とする組織を明確にする

経営の目標や計画を達成するために、各々の組織が業務やミッション、各々の組織において必要な能力やスキル、業務経験、人員を配置するポジション、人数、業務内容などについて明確にします。

  1. 現状の人員配置を見える化する

組織図や社員の履歴書・評価シートなどの資料をもとに現状の人員配置を見える化します。現在どのポジションに、どのような能力やスキル、業務経験などを有した人員が何名配置されているのかを確認した上で、社員の経歴や社内での業務実績といった、人員配置の計画を立てる際に参考にしたい情報を整理し、組織が理想とする組織とのギャップを明らかにします。

参考にしたい情報がバラバラだと最適配置の分析に支障をきたすため、一元管理できていることが前提です。

  1. 人員配置計画を作成する

組織・企業のパフォーマンスを最大化できるように人員配置を検討し、新たな組織の稼働を最適化するための人員配置計画を作成します。

目標を達成するために必要な業務を洗い出した上で、部門ごとに必要な人員数をとりまとめます。社員のモチベーションにも関わるため、業務量や人件費のバランスを考慮しながら計画することが大切です。

人員配置は人事部や管理職が実施するのが一般的ですが、人員配置の最適化を実現するためには社員の要望や意見を聞くことも行いましょう。社員ひとりひとりが能力を発揮して組織・企業の目標達成を目指していくため、業務の現状や将来的に取り組みたい仕事などについて把握しておきましょう。

最適な人員配置を実施する際には、一部のハイパフォーマー人材を対象に検討するのではなく、非正規社員などを含めたすべての社員を対象とすることです。それぞれの能力や適性を活かした適能適所の配置を行うという考えを持ち、最適配置を実施します。

まとめ

いかがでしたか?

人出不足や労働人口の減少でますます最適配置を行うことが企業の持続的な成長に大きく寄与することがお分かりいただけたかと思います。とはいえ、いきなり全てのメリットを享受できるわけでも、プロセス通りに推進、実施することは難しいかもしれません。

まずは自組織で社員の活躍を促進するために、そして組織のパフォーマンスの質を上げ、組織目標を達成するためにも、まずは社員のスキル、適性など人に関わる情報を一元管理することが重要です。そのためにもタレントマネジメントの仕組みを取り入れ、タレントマネジメントシステムを使い、情報収集し、組織の成長度合い、タイミングに合わせて、検討、分析できる土壌を作っておきましょう。

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