タレントマネジメント

タレントマネジメントを使った組織分析のイロハ

タレントマネジメントを導入し、社員のデータを収集できたが、データをどう活用すればよいのかわからない、データを分析するに至っていない、データを分析したが組織に還元できていないと感じる人事担当者からの悩みを伺うことが多くあります。

また2023年3月期決算以降、有価証券報告書を発行する上場企業などは、「人的資本の情報開示の義務化」が始まるため、日本企業は人的資本経営への取り組みが喫緊の課題となっています。
上場企業でなくとも、社内外のステークホルダーに向け、自社の人材について説明責任を求められる場面がこれから増えてくると予想され、人事担当者にとっても他人事ではありません。

そこで今回は、タレントマネジメントで収集したデータを使い、組織を分析する目的やメリット、手順について解説します。

タレントマネジメントで組織分析を行う目的

組織分析は、企業そのものや社内組織の特徴・現状を客観的に評価し、人材が持つ適性や能力、資質などを客観的に分析・評価する手法を人材分析と言います。

分析に使用するデータはタレントマネジメントシステムを通じて収集したデータを活用し、人材分析は「人材」に注目するのに対し、組織分析では「企業全体」を評価します。別々の手法のように感じるかもしれませんが、両者は密接に関係していることを忘れてはなりません。

今までのブログでも「目的」の重要性を何度も述べてきていますが、組織分析においても、何を目的に行うのかが重要です。目的を決めないまま、分析を進めると出てくる結果もあいまいなものになり、そこから考察することも、課題解決につなげることもできません。

組織分析を行う目的として、一般的には、以下が考えられます。
・必要な人材を獲得するための「採用」
・ 社員が業務で必要な能力やスキルを身に付ける「人材育成」
・ 社員に対する「人事評価」の制度策定や運用
・ 社員のスキルや能力、およびキャリアパスに伴う適材適所な「人材配置」
・ 社員の「モチベーション管理」

全て網羅しなくてはいけないわけではありません。タレントマネジメント運用の状況に応じて、優先順位をつけ、目的に応じた分析、考察、評価を行い、それぞれの目的における課題を発見し、解決に向けて打つ手を講じていくことが定石です。

タレントマネジメントで組織分析を行うメリットとデメリット

ここからは組織分析を行うメリットとデメリットをご紹介します。メリットとしては、3つ挙げられます。

メリット1:組織を客観的な視点で評価できる
企業や組織の特徴、強みや弱みの把握や社風といった目に見えないものを明確にできます。しかも分析結果の数値から感覚的ではなく、客観的な視点で評価することが可能になります。企業のビジョンや理念といった価値観について、企業(経営層)と社員や組織とのギャップや浸透度といった組織としての結束感を測ることも可能です。

また、人材分析のデータと組み合わせることで、公平な人事評価や適材適所の人員配置がうまく機能しているのかといった視点で分析することもできます。

メリット2:自社で活躍する、定着する人材を明らかにできる
社員のデータが集積された組織分析から、活躍できるチームはどのような特徴を持っているか、高い成果を出す社員はどんな能力を発揮し、適性があるのかといった人材像を把握できます。
勤務情報や従業員満足度調査の結果といったデータから自社に定着している人材のタイプを見出すことで離職率の低下やモチベーションの向上・維持に対する施策に繋げることが可能です。また組織、個人の育成計画や研修メニューの整備など適切な人材育成を構築することにも役立ちます。

メリット3:採用要件の明確化
採用を行う際、従来は前職での経験など履歴書や職務経歴、場合によっては適性検査の結果を元に面接で選考を進め、明確な指標がないまま採用の通知を出していることが多いと思います。期待した人材を本人の希望する条件や待遇で採用したものの、現場で期待通りの活躍ができておらず、最悪の場合は、早期に退職してしまうことになったという例はよく耳にする話です。

組織分析の結果で、その組織の特徴、強みや弱みを把握することで、採用したい人材はどの役割を担い、どのような能力やスキルを保有が必要なのかを明確にできます。また、その組織で活躍する人の特性と適性検査の結果と照らし合わせ、組織で活躍できるタイプを把握し、客観的な指標を持つことで採用要件を明らかにすることができます。
採用要件が明らかになることで採用時のミスマッチも格段に下がってくることが期待できます。

一方、デメリットとしては、

デメリット1:導入、運用時のコストがかかってしまう
タレントマネジメントシステム、その他のツールを使うにあたっては、経済的なコストと人的なコストがかかります。また、データを分析する人材のリテラシー(どのデータを利用し、組み合わせ、分析結果を引き出すか)が必要で、採用するか、社内の人材を育成するコストも必要です。

そして分析結果を考察し、経営層や組織へフィードバックを行う、分析結果を施策へ展開するなど結果を次へつなげる人材の確保も必要です。

デメリット2:目的が不明確だと成果が見えにくくなる
繰り返しになりますが、導入の目的が不明確だと、思ったような成果や効果が得られないということです。コストをかけたけど効果が得られなかった、のではなく、目的が不明瞭だったから分析もぼんやりしてしまい、効果が得られないと感じてしまうのです。

デメリットを回避するには、やはり目的の明確化は絶対に押えておくべきことです。また人的コストは社員の数が増えるほど膨らみます。そのため、実施・運用する人事部門の体制も経済的なコストと同様考慮しておく必要があります。

タレントマネジメントの組織分析を行う手順とポイント

しかし、実際に組織分析、人材分析を行うとなると、「何から始めて良いのかわからない」と考えている方も多いのではないでしょうか。

手順としては、4つのステップを踏みます。

  1. 組織分析、人材分析を行う目的を決定する
  2. 目的に対し、自社が抱える課題を考える(仮説を立て、設定する)
  3. 必要な社員情報を収集する
  4. 仮説検証を行い、結果を分析する
  1. 組織分析、人材分析を行う目的を決定する

上記「タレントマネジメントで組織分析を行う目的」で述べています。

  1. 目的に対し、自社が抱える課題を考える(仮説を立て、設定する)

例えば、
・離職率が挙がっているのは、人事評価の納得性が低く、頑張りが公平に評価されていないと感じているのではないか。
・マネジメントがうまく機能できていない組織ではモチベーションが下がり、組織目標・個人目標の達成度が低いのではないか。
といった仮説を立てることで、どのようなデータを収集することが望ましいのかが明確になります。

  1. 必要な社員情報を収集する
  2. 仮説検証を行い、結果を分析する

タレントマネジメントでは、多くのタレントマネジメントシステムが存在します。タレントマネジメントの仕組みを入れているが、タレントマネジメントシステムまでは導入していない、または一部機能だけ利用している企業もいらっしゃると思います。

タレントマネジメントシステムでは、人事評価やスキル診断、目標管理、人材育成(研修履歴や取得資格等)に関する人材情報をデータとして収集することができ、それらを元に自動的に組織分析や人材分析ができる機能を持っていることがほとんどです。それぞれシステムごとに実現できる分析、アウトプットが違いますので、システムを選定する際に求めている機能は何かを明確にしておくとよいでしょう。

タレントマネジメントシステム未導入や一部利用の場合には、分析ツールとして代表的なものはMicrosoftのExcelです。簡単な分析やより高度な人事データ分析ができますが、相関分析や回帰分析、さらに複雑なデータを分析するにあたっては操作に関する専門的知識が必要となる点に注意が必要です。

分析ツールのひとつとしてBIツールも挙げられます。BIとはBusiness Intelligenceの略であり、蓄積された大量のデータを集めて分析し、迅速な意思決定を補助するツールです。分析後の結果や表をグラフ化して可視化することが得意なツールです。代表的なツールとしてMicrosoft Power BI、GoogleデータポータルやDomoなどが挙げられます。

仮説に対して、結果がどう出ているのか、分析を行います。立てた仮説が正しいのか、それとも違うのか、結果によって、その後、課題解決を行う手立てを考え、施策に反映していきます。組織であれ、人材であれ、分析をいきなり行うのではなく、しっかり目的を立て、課題に対して仮説を持つことで、結果の活用度合いは全く変わってきます。

まとめ

いかがでしたか?

タレントマネジメントを導入し、システムを構築したものの、うまくデータを活用できていない、どう活用すればいいのかわからないと感じている方も多いと思います。実際に大企業でもシステム化し、データ分析を行っているものの、その分析結果を活かしきれていないという課題を持っている例も耳にします。

ただデータを収集し、人材のデータベースを構築するだけでは、宝の持ち腐れです。貴重な情報を分析した結果を経営戦略や人事戦略にフィードバックし、課題を探り、改善を繰り返すことで人の成長、組織の成長につながります。
それを継続していくことで、新規事業の創出や新規分野への進出といった事業に直接影響を与えることが可能になります。まずは、今あるデータを分析し、その結果を組織、人材へフィードバックすることから始めてみませんか。

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