タレントマネジメントという人材戦略の考え方

近年よく耳にするようになった「タレントマネジメント」。

特にタレントマネジメントのツールについての情報は、テレビや交通機関のCMなどで、目にすることが多くなってきました。では、この「タレントマネジメント」とはどんな考え方のものなのでしょうか?今回は、街でよく見かけるようになった「タレントマネジメント」という人事戦略の考え方について、ご紹介します。

タレントマネジメントとはどんな考え方か?

タレントマネジメントとは、元々1990年代にアメリカで提唱された人事戦略のことです。

近年、急激に進むテクノロジーの進化や、市場環境の悪化等による競争の激化、日本国内の少子高齢化といった、企業を取り巻く経営活動に影響を与える様々な要因から、日本でも注目されはじめ、近年タレントマネジメントツールの企業が出すCMの増加によってだいぶ一般的になってきました。

タレントマネジメントのことを、語弊を恐れず、ざっくりと一言で説明すると、
「企業で働いている従業員の能力やスキル、適性を発揮してもらえるように、人材配置や人材育成などを行う人事戦略のこと」です。
世の中にある様々な人事戦略と同様で、企業の目標を達成するためにという考え方のもと、作られています。

例えば、「売り上げをもっと増やしたい!」という企業がいるとします。
皆様がその企業の人事なら、どうするでしょうか?色々な打ち手を思いつくかもしれません。

「営業の数を増やすべくたくさんの営業を採用しよう!」
「営業の質を高めるために、営業研修や製品の研修を行うか?」
「提案の訴求力を高めるために、プレゼンテーション研修の実施が不可欠だ!!」
「製品のことをよくわかっている開発部のメンバーを営業に配置転換したほうが良いかもしれない…」

この思いついた色々な打ち手の中で、効果的なものはどれか。どれを行えば、売上をもっと増やすという企業目標を達成できるか…。それを見極めるための指針が、タレントマネジメントという人事戦略です。

もし、現状、営業が数えるだけしかおらず、ほかの部署も人員が不足していて、営業の手が足りなかったら、新たに営業を採用するべきかもしれません。
もしくは、現在の営業メンバーが、新規開拓でリードを取ってくることに長けている人が多く、提案プレゼンやクロージングの経験不足・力不足が否めない、という現状であれば、プレゼンテーション研修を行うか、あるいは提案プレゼン・クロージングの経験がある人を他部署から異動させてきたり、新しく採用してきたりするべきかもしれません。

このように、従業員や組織の現状をきちんと見極め、従業員たちが企業目標を達成するために全力を発揮できるような人事施策を選択し、実行していくのが、タレントマネジメントの考え方なのです。

タレントマネジメントの考え方に不可欠なこととは?

タレントマネジメントの考え方を社内に取り入れていく為に、避けては通れないことがあります。
それが、従業員情報の見える化です。
これまでほかの記事でも「見える化」についていろいろとお話してきましたが、タレントマネジメントにおいては特に重要となっています。

例えば、従業員がどんなスキルや経験を保有しているか、どんな適性を持っていて、どんなことに力を発揮できているか…。こうした従業員の情報をしっかり取りまとめ、グラフやヒートマップ等を使い、従業員のデータを見える化することで、正確に社内リソースの現状を把握することができるようになります。

逆に、社内リソースの現状を正確に把握できないと、「従業員や組織の現状をきちんと見極め、従業員たちが企業目標を達成するために全力を発揮できるような人事施策を選択し、実行していく」というタレントマネジメントの考え方に取り組むことができません。

しかしながら、忙しく、ほかにもたくさん優先すべき業務がある中、従業員一人ひとりの保有スキル、経験、適性をチェックし、データを集め、見える化するのは労力がとても大きく、困難です。
そこで、多くのタレントマネジメントツールは、社内リソースの把握を行い、見える化する仕組みを保有しており、サービスとして提供しているのです。

タレントマネジメントの考え方で社内リソースを見る

ここまでで、タレントマネジメントの考え方を企業に取り入れていく為には、社内リソースの把握、すなわち、従業員情報の見える化が不可欠であることをご理解していただけたかと思います。しかし、従業員情報を見える化するのは大変な労力なので、見える化が終わった時点で満足して終わってしまう企業をよく見かけます。

「タレントマネジメントツールを導入したものの、活用できていない。」
「従業員の情報をすべてタレントマネジメントツールに入れたから大丈夫!」
「従業員情報が人材育成や評価等の人事施策にどう関係するかわからない…」

こうした声が挙がってくる場合は、大体見える化で終わってしまっているケースです。従業員情報の見える化や、タレントマネジメントツールに必要な情報を入れること自体は、タレントマネジメントではなく、タレントマネジメントの準備段階なのだということを忘れないでおいてください。

では、タレントマネジメントの準備段階である、従業員情報の見える化が整ったら、次はどうするのか?
いよいよここからがタレントマネジメントの考え方のスタートです。本格的にタレントマネジメントの考え方で、見える化している情報を見ていく必要があります。

ここで、先ほど例に挙げた、「売り上げをもっと増やしたい!」という企業で考えてみましょう。
「売上をもっと増やしたい!」という目標を達成するためには…?
こう考えながら見える化した社内リソースを見ます。

「売上をもっと増やしたいのに、営業のスキルや経験を保有している人材が営業部にいない!」
「営業のスキルが高い人材が、製造部にいる…!」

このように、企業の目標に照らし合わせて考えると、見える化された社内リソースの情報に良い悪い、もう少しいうと、課題が見えてきます。見えてきた課題に対して、より従業員が企業目標達成に向けてパフォーマンスを発揮できるように人事施策を戦略的に打つことが、タレントマネジメントの考え方です。
社内リソースの見える化ができたら、タレントマネジメントの考え方で、社内リソースを詳しく見ていきましょう。

「営業のスキルが高い人材であるAさんが製造部にいるのはなぜだろう?」
「Aさんは社内で唯一製品Bを0から作った経験がある人だ…」
「製品Bを0から作る知識は、研修でほかの従業員も持っている!」
「何人か製品Bを0から作る経験を積めば、Aさん以外でも製品Bを担当できるかもしれない」

タレントマネジメントの考え方で社内リソースを見ると、大変なことに気づくことがあります。企業の中で、製品Bを担当しているのがAさんだけというのは、とても危険です。Aさんが何かしらの理由で働けなくなったり、いなくなったりしたら、企業活動に差し支えてしまいます。これは、直ちに補強し、層を厚くするべきでしょう。

また、本当は営業のスキルが高いAさんも、実は製品Bを0から作ることを経験したことがあるだけで、製造部に所属することになっている可能性があります。企業としては、製品Bを0から作る知識を他の従業員にも研修で伝えるという人材育成を取っていますが、この知識、スキルが発揮する場がなければ、Aさんの経験をなかなか超えられません。Aさんの下について、経験を積む人事異動・配属ができれば、Aさん以上の成果を発揮できる可能性もあります。そうなれば、営業スキルが高いAさんは営業に異動できるようになり、売上をもっと増やす!という企業の目標に向かって組織が前進できるかもしれません。

このように、見える化した社内リソースを、タレントマネジメントの考え方で見て、企業目標達成に向けた人事施策を、戦略的に打っていくことが、重要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回はタレントマネジメントの考え方をテーマに、下記の内容をご紹介しました。

・タレントマネジメントは企業目標達成に向けた人事施策を、戦略的に打っていく人材戦略であること
・タレントマネジメントの考え方を企業に取り入れるには、社内リソースの見える化が必要不可欠であること
・社内リソースの見える化で満足せず、「企業目標達成するために、従業員の能力やスキル、適性を発揮してもらう  には?」という観点で社内リソースを見ること

一朝一夕にタレントマネジメントを企業へ導入することはできません。考え方をおさえつつ、しっかりと準備を整えて、タレントマネジメントの導入に取り組んでみてください。

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