人財育成の仕組みづくり

人材育成とマネジメントの関係に潜む思わぬ落とし穴とは!?

リーダーシップ、部下や社員の人材育成、マネジメント…。
いずれも管理職研修などでよく取り上げられるテーマです。それゆえ、一緒に語られることが多く、混同しがちかもしれません。特にリーダーシップとマネジメントの違いについては、書籍やネットでも語られる内容です。
では、部下や社員の人材育成とマネジメントはどうでしょう?
今回は、人材育成とマネジメントの関係性と、関係性に潜む思わぬ落とし穴についてご紹介いたします。

人材育成とマネジメントの関係

マネジメントの父といわれるドラッカー曰く、マネジメントとは「組織に成果を上げさせるための道具、機能、期間」のことだそうです。
簡単に言うと、成果を上げるために業務を円滑に回す、というイメージでしょうか。
一般的には、予算や業務プロセスの管理、業務配分等、チームが仕事を早く、効率的に行えるように様々なことに取り組む活動が思い浮かべられると思います。

では、どうすれば業務を円滑に回し、設定した目標に沿って組織を運営していけるでしょうか?
業務がうまく回るような仕組みづくり、業務を部門や社員に適切に配分すること、適切な報酬・インセンティブの設定、どういう状態が適切であるかを示す評価基準の策定…。
色々思いつくものがあると思います。
そして、こう考える方もいるでしょう。
「仕事ができる人間が揃えば、業務は円滑に回るのでは…?」

マネジメントと人材育成がよく一緒に出てくるのは、人材育成がマネジメントの重要な要素の一つだからです。
業務を円滑に回し、設定した目標に沿って組織を運営するには、優秀な人材が欠かせません。
業務を配分された社員に、業務を遂行する力がなければ、たちまち業務は滞ってしまうでしょう。
また、マネジメントする側の人材も、社員やメンバーの強みや能力を引き出す力がなければ、いかに優秀な人間が組織に揃っていても、設定した目標を達成できず、成果を上げられないかもしれません。
そのため、管理職研修やマネージャー研修では、マネジメントする側を人材育成するとともに、部下育成や社員育成といった人材育成の話が、マネジメントの重要な要素の一つとして、出てくるのです。

人材育成はマネジメントを楽にする!?

ここまでの話で、人材育成とマネジメントの関係について、ご理解いただけたかと思います。
人材育成は、マネジメントの重要な要素の一つである。
つまり、人材育成がしっかりされていると、マネジメントが非常に楽になる可能性があります。
少し事例を挙げてイメージしてみましょう。

あなたは業務プロセスを管理する立場のマネージャーだとしましょう。
一連の流れである沢山ある業務を、多くの社員で分担して取り組む時に、プロセスの管理が重要になります。
この時、この一連のプロセスに関わる全社員が、プロセスの全体像をしっかり理解していたらどうでしょうか?
もしかすると、自分が担当の業務をこなすだけでなく、次のプロセスに配慮した質の高い仕事を行ってくれるかもしれません。
すると、次のプロセスの業務がとても効率よく回っていきます。
あれこれ業務プロセスの管理に策を練るより、一人ひとりが次のプロセスを意識した質の高い仕事を行ってくれた方が、よっぽどマネジメントが楽になるでしょう。

では、このように一人ひとりが質の高い仕事を行ってくれるようになるには、どうしたらいいでしょうか?
まずは、一連のプロセスに関わる全員が、プロセスの全体像を知る機会が必要です。
自分の前後のプロセスで、誰がどんな活動をしているか知らなければ、次のプロセスへの配慮はできません。
また、そもそも次のプロセスに配慮するような働き方ができるマインドを身に着けていなければ、プロセスの全体像を理解していても次のプロセスへの配慮なんてしないかもしれません。
そうなると、チームでの働き方についてや、チームビルディングについて学ぶ機会が必要となります。

このように、そもそもマネジメントがグッと楽になるような質の高い仕事を社員やメンバーができるように、知識や技術・マインドの習得を支援する、これこそがマネジメントにおける人材育成となります。

忙しい現場になると、人材育成の余裕はないという声をよく耳にしますが、実は忙しい時こそ、人材育成に取り組んだ方が、マネジメントが楽になり、忙しさを軽減できることがあるのです。

人材育成とマネジメントの関係に潜む思わぬ落とし穴

ここまで、マネジメントの観点から見た人材育成についてお話ししてきましたが、最後に、マネジメントの観点から見た人材育成の落とし穴についてご説明いたします。

人材育成は、マネジメントの重要な要素の一つですが、すべての人材育成がマネジメントに基づくと、大変な落とし穴にはまってしまいます。
なぜなら、マネジメントは、あくまで「設定した目標に沿って組織を運営する」という観点で物事を見るからです。
つまり、目標に沿うこと、そして組織が円滑に回るように動くこと、これに則る人材を育成することしかできません。
極端な言い方をすると、言われたこと、決められたことを早く手を動かして実行できる機械のような人材を育成しようとすることになりえます。

例えば、目的地に向かって歩くとしましょう。
目的地に早く、体力を消耗せずにつくために、歩きやすい靴を買ったり、動きやすい服装に着替えたりします。社員が仕事をしやすい環境を作るマネジメントです。
そして、今度は早く歩けるように早歩きの練習をします。
なるべく無駄なく、エネルギーの消費を抑え、早く歩ける効率的な歩き方を身に着ける。
これがマネジメントの観点からの人材育成です。
さて、こうしていい靴を履き、動きやすい服になり、訓練を積んだ人は、果たして目的地に早くたどり着けるでしょうか?
答えは否。
どんなに早く歩けても、方向音痴で道を間違えてばかりいたら、同じところをぐるぐるぐるぐると早く歩くだけで、目的地にたどり着けません。
最悪の場合、ゆっくりしか歩くことのできない人より、目的地への到着が遅くなるかもしれません。

人材育成をすべてマネジメントの観点から見て行った場合、このように目的地にたどり着けない早く歩くだけの人、が育ってしまうケースがあります。
特に現代は、時代の変化が激しく、テクノロジーの進化が著しいため、業務効率、スピード、マネジメントが重視されてきました。
誰もが、早く歩くための訓練と支援ばかりを受けてきたのです。

7つの習慣の著者であるスティーブン・R・コヴィーによると、マネジメントとは、「最優先事項を優先すること」だそうです。
最優先事項を優先するためには、まず何が最優先事項なのかを知らなければいけません。
何が最優先事項か、方向性を指し示す。
これはリーダーシップの領域になります。
早く歩くことも大切ですが、正しい道を選び、歩いてこそ、歩く早さは意味を持ちます。
早く歩く訓練も必要ですが、どこが目的地なのかを指し示し、社員やメンバーが正しい道を選ぶ力を身に着けさせることも必要なのです。

マネジメントの一要素として人材育成を考える際は、早く歩く訓練に取り組んでもらう必要がありますが、企業としての人材育成を考える際は、早く歩く訓練に偏重せず、広く高い視座で検討し、正しい道を選ぶ力を身に着ける訓練も忘れないでください。

まとめ

人材育成とマネジメントの関係についてご説明してきましたが、いかがでしょうか。
マネジメントの観点から見ると、人材育成は重要な要素であること、人材育成に取り組むことがマネジメントを楽にするケースがあること、そして、人材育成はマネジメントの要素だけではない、すなわち、マネジメントの観点からだけで人材育成を見てはいけないこと。
これらの内容をおさえて、企業の人材育成を考えていただければ幸いです。

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